No4
🔑私自身も、考えてみるとこのじいちゃんの家の体験が、その後の人生の
原点になっているような節がある。
例えば、じいちゃんの作業小屋にはフイゴがあったのを、覚えている。
フイゴとは、風圧で火力を上げて金属を赤く熱する装置である。
🔨別段、じいちゃんの職業が鍛冶屋ではないのである。
ところが当然のように、村人の農具や大工道具を、造ったり修理したりして
いたのだった。
この集落でも、専門に大工さんが居なくて、各々のうちを建てるには代わり番こで
村人の男たちが協力して造っているそうだ。
じいちゃんはおそらく、鍛冶屋替わりの役回りであったのだろう。
🛳ある時、このじいちゃんから、船のオモチャを造って貰った事がある。
其れは木製の手創りながら、大人の目からも本当に精巧に出来ていて、町の公民館
に勤める近所の人から「展示物用に、造って欲しい」との話まで出たくらいだ。
しかし、一週間もたたないうちに庭に置いたまま、行方知らずになってしまった。
じいちゃんは怒って、ニ度と造ってはくれなかった。
🗜だいぶ後になって解った事がある。ミニチュアを作るには、工具ずくりから始め
なければならない。
あの作業小屋にあったフイゴのお陰で、オモチャ用の小さな工具までをも、作れた
のだと。
それからのち、自分の好きな仕事の方向性に、金属加工といゆうものが頭をもたげて
来るのである。